勘定科目マスタの整理手順:freeeとマネーフォワードの違い

クラウド会計の実践2026年8月8日6分で読めます

適用時点: 2026年8月時点(各ソフトの仕様は変更される場合があります)

前回の記事「AIに仕訳を任せる前に決めておくこと」で、最初にやるべきこととして「使っていない勘定科目を統廃合する」と書きました。

ただ、実際にやろうとすると手が止まります。消そうとした科目が消せないからです。しかもfreeeとマネーフォワードでは、そもそも科目の設計思想が違います。

この記事では、両ソフトでの具体的な手順と、消す前に確認すべきことを整理します。

なぜ科目を減らすのか

科目が多いこと自体は問題ではありません。問題なのは、同じ性質の取引が月によって別の科目に振られることです。

「雑費」と「消耗品費」の両方が生きていると、同じ文房具の購入が今月は雑費、来月は消耗品費に入ります。こうなると推移表で増減を追えません。数字が読めなければ、月次を見る意味が薄れます。

生成AIに仕訳を任せる場合はさらに影響が大きくなります。AIは選択肢として提示された科目をすべて候補にするので、意味の重なる科目が並んでいると出力が安定しません。

前提:着手するのは期首

科目の統廃合は、期首に行ってください。

期の途中で変えると、前半と後半で同じ取引が別の科目に入り、その期の推移表と前期比較が両方とも読めなくなります。決算書の科目も変わるため、前期との比較可能性が損なわれます。

期中に気づいた場合は、次の期首まで「新しいルールで運用する準備」をしておき、切り替え自体は期首に行うのが安全です。

ステップ1:使用実績を出す

まず、直近1年でどの科目をどれだけ使ったかを出します。

  • マネーフォワード クラウド会計:「会計帳簿」→「推移表」で年間の科目別金額を確認
  • freee:「レポート」→「損益計算書」や「月次推移」で確認

ここで見るのは金額の大小ではなく、使用の有無と頻度です。年に1〜2回しか登場しない科目は、統廃合の候補になります。

このリストがそのまま作業対象になります。

ステップ2:freeeとMFで「科目の下の階層」が違う

ここが一番間違えやすいところです。

マネーフォワード クラウド会計:勘定科目 + 補助科目

一般的な会計ソフトと同じく、勘定科目の下に補助科目を作れます。「支払手数料」の下に「振込手数料」「決済手数料」を置く、といった使い方です。

freee会計:補助科目という機能がない

freeeには補助科目という機能がありません。代わりに「取引先」「品目」「部門」「メモタグ」「セグメント」といったタグを仕訳に付けて、内訳を管理します。

役割の目安は次のとおりです。

タグ 主な用途
取引先 相手先ごとの管理
品目 勘定科目の中をさらに細かく分けて集計する
部門 部署別・店舗別の損益管理
メモタグ 後で確認したいことの目印

他社ソフトからfreeeへ移行するときに事故が起きやすいのがここです。「補助科目で取引先を切っていた」運用をそのまま持ち込もうとして、品目タグに取引先名を並べてしまうケースがあります。freeeには取引先タグがあるので、取引先は取引先タグで管理してください。

前回の記事で「補助科目は、取引先で切るか用途で切るかを混ぜない」と書きましたが、freeeの場合はそもそもタグの種類で分かれているので、どのタグに何を入れるかを最初に決めておけば混ざりません。

ステップ3:削除できない科目の扱い

整理対象が決まったら実際に消します。ここで両ソフトとも制約に当たります。

マネーフォワード クラウド会計

  • 初期値として登録されている勘定科目・補助科目は削除できません。使わない勘定科目は「勘定科目」画面でチェックボックスのチェックを外し、非表示にします
  • 初期値以外の科目は、ゴミ箱アイコンから削除できます
  • 補助科目は非表示にできません。削除のみです。つまり初期値の補助科目は、消すことも隠すこともできません

そして、非表示・削除ができるのは事業者内で使用されていない科目だけです。

「使っていないはずなのに削除できない」という状況によく遭遇しますが、これは仕訳帳以外の場所で参照されているためです。マネーフォワードのサポートは、確認すべき場所として次の5つを挙げています。

  1. 仕訳帳(借方・貸方それぞれ、過年度分も)
  2. 自動仕訳ルール(通帳・カード他/ビジネスカテゴリ/AI-OCR の3種類)
  3. 仕訳辞書
  4. 登録済一覧の科目設定
  5. 収入先・支出先

仕訳帳だけ見て「使っていない」と判断すると、まず削除できません。特に自動仕訳ルールは3画面に分かれているので見落としやすい箇所です。

freee会計

freeeでは、自分で追加した勘定科目は、どの仕訳にも使われていなければ削除できます。仕訳(取引・口座振替・振替伝票・減価償却など)で使われている場合は、先に仕訳側の科目を変更してから削除する、という順序になります。

ステップ4:消す前に確認する3つのこと

作業を始める前に、次を確認してください。科目の整理は、単なる見た目の話ではありません。

消費税の税区分

勘定科目には既定の税区分が紐づいています。統廃合で科目を寄せると、寄せ先の税区分が適用されることになります。

課税・非課税・不課税が混在しがちな科目(保険料、支払手数料、諸会費、租税公課など)を統合するときは、税区分が意図しないものに変わっていないかを必ず確認してください。ここを見落とすと消費税の申告額に影響します。

勘定科目内訳明細書

法人税の申告では、一定の科目について勘定科目内訳明細書の添付が必要です。科目の構成を変えると、この明細書の作り方も変わります。

顧問税理士がいる場合は、整理する前に相談してください。決算のタイミングで整合が取れないことに気づくと、対応が後手になります。

前期との比較可能性

決算書の科目が変わると、前期比較が読みにくくなります。統廃合する場合は、決算書上どう見えるかを事前に確認しておくとよいでしょう。

ステップ5:残した科目のルールを文章にする

科目を減らしたら、残した科目について「迷ったらこちらを使う」という判断基準を文章で残してください。

消耗品費:1年以内に使い切る物品の購入。10万円未満
支払手数料:金融機関・決済代行への手数料
支払報酬:税理士・司法書士など、源泉徴収の対象となる報酬

この文章には2つの役割があります。

  1. 担当者が変わっても運用がぶれない
  2. そのまま生成AIへの指示文として使える

前回の記事で「決めたルールがそのままAIへの指示になる」と書いたのは、この部分です。科目を減らす作業と、AIに渡すルールを作る作業は、実質的に同じ作業です。

まとめ

  • 統廃合は期首に行う。期中に変えると比較ができなくなる
  • freeeには補助科目がない。タグ(取引先・品目・部門)で内訳を管理する
  • MFは初期値の科目は削除できず非表示のみ。補助科目は非表示もできない
  • 「使っていない」の判定は、仕訳帳だけでなく自動仕訳ルール・仕訳辞書なども確認する
  • 消す前に税区分・勘定科目内訳明細書・前期比較を確認する
  • 残した科目の判断基準を文章にする。それがAIへの指示文になる

当事務所では、freee・マネーフォワード クラウドの運用設計を支援しています。科目の統廃合は影響範囲が広いので、着手前に一度ご相談いただくのが安全です。

出典

本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の取引に対する税務判断を示すものではありません。各ソフトの仕様は変更される場合があります。実際の処理にあたっては、最新のヘルプおよび顧問税理士にご確認ください。