2027年1月、e-Taxの開業手続が一体化へ。届出期限と税務判断は別に確認
適用時点: 2026年11月2日時点。新機能は2027年1月提供予定
執筆者: 檜垣秀治(公認会計士・税理士) 代表紹介を見る
個人で事業を始めるときには、開業届に加え、青色申告の申請や給与に関する届出などを準備します。こうした手続をe-Taxでまとめて提出できる新機能が、2027年1月から提供される予定です。
入力や提出の負担は軽くなりますが、各手続の提出期限が統一されるわけではありません。開業にあたって検討すべき税務上の選択も残ります。今回は、個人事業を始める方に向けて、変わる点と事前に確認したい点を整理します。e-Taxの公式案内
一体化されるのは、個人事業者の5つの手続
今回の対応は、2023年度税制改正で設けられた統合様式を利用するものです。対象は「開業の届出」「青色申告承認申請」「青色事業専従者給与に関する届出・変更届出」「給与支払事務所等の開設の届出」「源泉所得税の納期の特例の承認申請」の5つです。まとめて提出するほか、必要な手続を選んで提出できる予定です。
全員が5つとも提出するわけではありません。家族が事業の仕事を専ら担うのか、従業員を雇うのかなど、事業の始め方によって必要な届出は変わります。今回の公式発表の対象は個人事業者の開業関係手続であり、法人設立の手続まで含まれるものではありません。画面イメージは変更の可能性があるため、実際の操作は提供開始時の案内で確認します。対象手続と提供予定
開業届と青色申告では、期限が違う
特に気をつけたいのが、開業届の期限です。2026年1月1日以後の開業については、開業した年分の所得税の確定申告期限までとなっています。以前の「開業から1か月以内」という説明を、そのまま当てはめることはできません。国税庁の開業届の案内、財務省の改正解説・83頁
一方、開業した年から青色申告をしたい場合の申請期限は、原則としてその年の3月15日です。1月16日以後に開業した場合は、開業日から2か月以内となります。開業届を翌年の確定申告時期に出せるからといって、青色申告の申請もそこまで待てるわけではありません。青色申告承認申請の期限
図1 提出をまとめても、期限は手続ごとに確認する
| 手続 | 主な期限・適用開始の考え方 |
|---|---|
| 開業届 | 2026年以後の開業は、開業年分の確定申告期限まで |
| 青色申告承認申請 | 原則その年3月15日。1月16日以後の開業は、開業日から2か月以内 |
| 青色事業専従者給与の届出 | 原則その年3月15日。1月16日以後の開業や新たな専従者の追加は、その日から2か月以内 |
| 給与支払事務所等の開設届 | 開設した日から1か月以内 |
| 源泉所得税の納期の特例の申請 | 随時。原則として申請した翌月に支払う給与等から適用 |
表は一般的な開業時の整理です。相続による承継、届出内容の変更、期限が休日に当たる場合などは、個別の取扱いを確認してください。専従者給与の届出、給与支払事務所等の届出、納期の特例の申請
給与支払事務所等の開設届には、引き続き1か月の期限があります。2026年以後は、開業届を提出する場合にこの届出を省略できた従来の規定も削除されています。開業届だけで済んだという過去の経験に頼らず、給与を支払う体制に合わせて確認しましょう。財務省の改正解説・83頁
選択する前に、税務と資金繰りを考える
青色申告を選ぶなら、日々の記帳と確定申告まで見据えて準備します。承認申請をe-Taxで送るだけで、青色申告特別控除の要件をすべて満たすわけではありません。記帳、決算書の作成、確定申告の方法など、適用する年分の要件を別に確認します。2027年分からの控除額や電子申告等の要件についても、国税庁の新しい案内を確認しておきましょう。国税庁の電子申告・電子帳簿に関する案内
家族に給与を支払う場合も、届出だけで必要経費になるわけではありません。青色事業専従者に当たるか、仕事の内容や従事期間に見合う金額か、届出の範囲内で実際に支払っているかなどの確認が必要です。青色事業専従者給与の要件
源泉所得税の納期の特例は、給与の支給人員が常時10人未満の場合に利用を検討できます。対象となる源泉所得税等を年2回にまとめて納める制度ですが、すべての源泉税が対象ではありません。申請したその日から適用されるわけでもないため、適用が始まる月を確認し、預かった税金を納付時まで確保しておくことが大切です。納期の特例の仕組み
提出前の整理と、提出後の記録まで
インボイス登録や消費税の課税・簡易課税の選択は、今回発表された5つの手続に含まれていません。取引先への請求、設備投資、納税負担に関わるため、開業届とは別に必要性と期限を整理します。新規開業者の主な届出
まず、開業日、給与支払事務所の開設日、家族が事業の仕事を始める日を書き出し、必要な手続ごとに期限を置きます。そのうえで、提供開始後のe-Taxの統合機能を活用すると、提出の準備を進めやすくなります。2026年中に期限が来る手続は、新機能の提供まで待たずに対応してください。
送信後は、提出した内容と受信通知を保存し、受付日時も確認しておきましょう。どの書類をいつ提出したかが分かる記録は、その後の申告や金融機関への説明にも役立ちます。国税庁が案内する提出事実の確認方法
手続が便利になる分、開業後の記帳や資金繰りに時間を使えるよう、税務上の選択を先に整えておきましょう。必要な届出や適用開始時期は事業の状況によって異なりますので、税理士にご相談ください。
参考資料
- e-Tax「令和9年1月からe-Taxが一層便利になります。」
- 国税庁 A1-5「個人事業の開業届出・廃業届出等手続」
- 財務省「令和5年度税制改正の解説」所得税法等の改正・83頁
- 国税庁 A1-8「所得税の青色申告承認申請手続」
- 国税庁 A1-10「青色事業専従者給与に関する届出手続」
- 国税庁 A2-7「給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出」
- 国税庁 A2-8「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」
- 国税庁「青色申告特別控除の改正、電子帳簿・電子申告」
- 国税庁 No.2075「青色事業専従者給与と事業専従者控除」
- 国税庁 No.2090「新たに事業を始めたときの届出など」
- 国税庁「申告書等の控えへの収受日付印の押なつについて」