飲食料品の消費税率1%案はまだ法案段階。2027年4月に向けた企業の準備

税制改正・法令アップデート公開 2026年11月2日6分で読めます

適用時点: 2026年11月2日時点。法案の成立・公布は未確認

執筆者: 檜垣秀治(公認会計士・税理士) 代表紹介を見る

飲食料品の消費税率を1%に引き下げる案を受け、レジや会計ソフトの対応が気になる事業者の方もいると思います。準備に入る前に、まず制度がどの段階にあるのかを確認しておきましょう。

2026年11月2日に確認した衆議院の審議経過では、法案は10月20日に財務金融委員会へ付託されており、審議結果や公布年月日・法律番号は記載されていません。本記事では、成立を確認できていない法案として扱います。現時点では、自社への影響を洗い出す段階です。販売時の税率を1%に切り替える根拠にはなりません。衆議院・議案審議経過

何が変わる案なのか

提出されている法案では、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、対象となる飲食料品の税率を国・地方合計で1%とすることが予定されています。国税庁の特設サイトも、掲載資料は法案が可決・成立した場合の内容だと明記しています。解説資料や申告書様式のドラフトが公表されていても、制度の確定とは分けて読む必要があります。法案本文、国税庁・消費税率引下げ特設サイト

現在の軽減税率は8%で、酒類を除く飲食料品と、一定の新聞の定期購読が対象です。外食などには標準税率10%が適用されます。今回の案で1%の対象とされるのは飲食料品であり、新聞も含めて軽減税率対象をすべて1%にする案ではありません。国税庁・消費税の軽減税率制度

図1 現行制度と、提出されている案を分けて見る

主な取引 現行の税率 案どおり成立・施行された場合
軽減税率対象の飲食料品の販売・持ち帰り 8% 原則1%。一定の経過的な取扱いを除く
一定の新聞の定期購読 8% 8%を維持
酒類、通常の店内飲食 10% 10%を維持

税率は国・地方合計です。改正案の期間は2027年4月1日から2029年3月31日まで。表は代表的な取引の整理で、個々の商品や提供方法の判定は別途必要です。国税庁・引下げ案パンフレット2~4頁

システムは「対象と日付」の整理から

まず、どの商品を、どの販売方法で、いつ提供しているかを整理します。持ち帰りと店内飲食を扱う店舗では、引き続き取引の区分が重要です。POS、EC、販売管理、請求書、会計ソフトの間で、税区分がどう受け渡されるかも確認しておきます。

案どおり実施された場合でも、変更前の売上げに対する返品は元の税率による調整が必要です。また、法案には、一定の定期供給契約や通信販売について従来の税率を適用する経過的な取扱いも含まれています。「4月の請求だから一律1%」という設計では対応しきれません。国税庁・引下げ案パンフレット3~4頁

契約日、条件を提示した日、申込日、入金日、引渡日をどこで管理しているかを洗い出しておくと、制度が確定した後の判定が進めやすくなります。システム会社には、対応方針、検証環境の有無、必要な期間を確認しておきましょう。本番設定の変更は、成立した法令と正式な案内を確認してから判断します。

価格は税抜額と税込額を分けて考える

税率が下がる案だからといって、商品の価格方針まで自動的に決まるわけではありません。税抜価格を維持する場合と、税込価格を維持する場合では、売上高や購入者の支払額への影響が異なります。

図2 同じ商品でも、価格の決め方で内訳が変わる

以下は価格の構造を説明するための仮定例です。現行の税抜価格を1,000円とし、同じ商品に案の1%が適用される場合を比較しています。特定企業の実績や価格改定の提案、消費税の申告計算ではありません。

項目 現行8% 案の1%・税抜価格を維持 案の1%・税込価格を維持
税抜価格 1,000円 1,000円 約1,069.31円
税相当額 80円 10円 約10.69円
購入者の支払額 1,080円 1,010円 1,080円

右列は1,080円÷1.01で税抜額を逆算し、小数第2位まで表示しています。実際の端数処理は別途確認します。仕入価格や販売数量はこの表に含めていないため、利益や納付額の増減を示すものでもありません。

自社で比較する際には、仕入価格や粗利益も並べます。法人間の契約が税抜価格に税額を加える方式なのか、税込総額で合意しているのかも確認事項です。店頭表示、EC画面、見積書、契約書で説明が食い違わないよう、変更が必要になりそうな箇所を整理します。実際の価格改定や表示方法は、法案の成立状況と正式な取扱いを踏まえて判断します。

資金繰りは業態と課税方式で変わる

税率が下がることと、事業者の納付額が同じ割合で減ることは別です。一般課税では、売上げに係る税額と控除できる仕入税額の差が納付額に関わります。食品販売業と、売上げが10%の店内飲食を中心とする飲食店では、影響の方向も異なり得ます。

例えば、食品の売上税率が下がり、設備や経費には10%の支出が残る事業では、控除できる仕入税額が売上税額を上回り、一般課税で還付が生じる可能性があります。一方、簡易課税では計算方法が異なります。法案には、飲食料品の売上げに関する簡易課税の計算や、一般課税へ移るための届出、中間申告の特例も盛り込まれています。現行制度の数字に新税率を当てはめるだけでは、十分な試算になりません。法案本文・第3~5条

今は、売上げと仕入れを税率別に集計し、現在の課税方式、入出金の時期、納税予定をそろえることが先です。現行制度が続く場合と、案どおりに実施される場合を分けて資金繰りを比較します。還付を見込む場合でも、その入金前の支払資金を含めて考える必要があります。

法案段階の準備では、自社のどこに影響が出るかを把握することが大切です。成立の有無、施行日、経過措置を確認したうえで、税率の切替えや届出、価格改定を判断します。自社の課税方式や契約に応じた対応は、税理士にご相談ください。

参考資料