政策金利1%下の借入管理:金利更新を受けて返済計画を見直す

法人の税務・会計実務2026年8月19日4分で読めます

適用時点: 2026年8月19日時点(金利は変動します。適用金利は各金融機関にご確認ください)

日本銀行は2026年7月30日と31日の金融政策決定会合で、無担保コールレート(オーバーナイト物)を1.0%程度で推移するよう促す方針を維持しました。日本政策金融公庫も8月3日付で金利を更新しています。

この記事は金利の先行きを予想するものではありません。予想が当たるかどうかに関係なく、いま手元の返済計画が古い前提のままになっていないかを確認する手順を扱います。

公庫の金利はどこまで上がったか

日本政策金融公庫の中小企業事業について、2026年8月3日実施時点の主要利率一覧では、標準的な基準利率が貸付期間5年以内で2.75%、9年超10年以内で3.25%、19年超20年以内で4.05%となっています。

ここで挙げているのは中小企業事業の基準利率です。公庫には国民生活事業もあり、利率の体系が異なります。単に公庫の金利と言うと混同するため、どちらの事業からの借入かを確認してください。

また公庫は、掲載している利率は標準的な貸付利率であり、適用利率は信用リスク(担保の有無を含む)等に応じて所定の利率が適用されると明記しています。制度融資には特別利率の区分もあります。自社に適用される金利は、この一覧を見ただけでは決まりません。

政策金利と自社の借入金利も、同じものではありません。政策金利の数字だけを使って支払利息を見積もると、実態から離れます。確認するべきは各契約の基準金利、上乗せ幅、見直しの周期です。

まず借入の一覧を作る

金利の話をする前に、借入契約の一覧がない会社が少なくありません。決算書の勘定科目内訳明細書だけでは、見直し条件までは追えないためです。

一覧に入れる項目は次のとおりです。借入先、当初の借入額と残高、固定か変動か、変動であれば基準金利の種類と見直しの周期および次回の改定日、返済期限、毎月の返済額、元金据置の有無と終了時期、保証の有無と保証料率、担保、そして財務制限条項の有無です。

財務制限条項は見落とされやすい項目です。純資産や利益に関する条項が付いている契約があれば、金利上昇で利益が圧迫されたときに、条項への抵触が金利より先に問題になることがあります。

3つのシナリオで試算する

一覧ができたら、金利の前提を動かして再計算します。予想を1つ立てるのではなく、複数のシナリオを置くのが要点です。現状維持、0.5ポイント上昇、1.0ポイント上昇の3本で十分です。

見るべき数字は4つあります。年間の支払利息、各月末の現預金残高、債務償還年数、そして次の設備投資に回せる資金です。

債務償還年数は算式が一つに定まっていません。本稿では簡便法として、短期借入金と長期借入金の合計を、営業利益と減価償却費の合計で割った年数を指します。金融機関によっては、現預金等を控除した実質有利子負債を分子に置いたり、税引後利益を分母に用いたりします。自社で試算するときは、どの算式を使ったかを資料に書き添えてください。

損益への影響だけを見て終わりにしないでください。支払利息が増えると、月次の資金繰り、設備投資の回収期間、配当の可能性、追加借入の余力まで連動して動きます。予算の支払利息の科目だけを差し替える対応では、影響を捉えきれません。

変動金利の借入がある場合は、次回の改定日を月次資金繰り表に印を付けて入れておきます。改定が期中に来るのか、期首に来るのかで、当期の着地は変わります。

借換えを検討するときに見るもの

金利が上がる局面では、長期固定への借換えが話題になります。ただし一律に勧められるものではありません。

借換えには、既存借入の繰上返済に伴う手数料、保証料の精算、担保や保証の付け替え、新規借入の事務手数料が伴います。表面金利の差だけで比較すると、これらが抜け落ちます。比較するのは、返済完了までに支払う総額と、その間の毎月の返済額です。

固定金利への借換え等で得られるのは、金利水準の有利さではありません。金利上昇のリスクを抑え、将来の支払利息と返済額の見通しを立てやすくすることです。設備投資の回収期間と借入期間を合わせたい、あるいは資金繰りの振れ幅を抑えたいという目的があるなら、その目的に照らして判断してください。

公庫、信用保証付きの融資、プロパー融資を比べるときも同じです。金利、保証料、担保、限度額、返済期間、既存の保証の扱いまで含めた総条件で見ます。

資金が足りないと分かったとき

試算の結果、どこかの月で資金が不足すると分かった場合、いちばんやってはいけないのは、その月が近づくまで待つことです。

返済条件の変更を金融機関に相談する場合でも、直前になってからでは選択肢が減ります。月次試算表と資金繰り表を持って、なぜ不足するのか、何をすれば戻るのかを説明できる段階で話を始めた方が、対話は進みます。

月次決算が締まるまでに2か月かかる状態だと、この対話は成立しません。金利の話の前に、月次を早く締める仕組みの方が効く場面もあります。

まとめ

政策金利の水準そのものより、自社の各契約がどの基準金利にひもづき、いつ見直されるのかを把握することが先です。そのうえで、基準金利を0.5から1.0ポイント上げた複数のシナリオで、年間の支払利息、月末の現預金、返済余力、投資余力を再計算してください。

借換えや長期固定への変更は、表面金利ではなく総資金コストと返済の確実性で判断します。資金不足が見えるのであれば、条件変更の直前ではなく、月次の数字を持って早めに金融機関と話す方が選択肢が残ります。

なお、この記事に記載した利率は日本政策金融公庫の中小企業事業について2026年8月3日実施時点の標準的な貸付利率であり、個別企業への適用や審査の結果を保証するものではありません。自社の借入条件については、取引金融機関にご確認ください。

参考