紙の手形終了に備える。支払いが早まる会社の資金繰り対策

法人の税務・会計実務公開 2026年9月12日5分で読めます

適用時点: 2026年9月12日時点

執筆者: 檜垣秀治(公認会計士・税理士) 代表紹介を見る

紙の手形で支払ったり、取引先から受け取ったりしている会社は、振込やでんさいなどへの切替えを進める時期です。

その際に確認したいのが、実際にお金が出ていく日です。支払いが早まる一方で販売先からの入金が変わらなければ、同じ売上でも以前より多くの運転資金が必要になることがあります。決済方法の変更とあわせて、資金をいくら、いつまでに用意するかを確認しましょう。

1.使っている金融機関の期限を確認する

銀行経由の通常の紙手形決済は、2027年3月末で実質終了します。全銀協が2027年3月31日をもって、電子交換所での手形・小切手の交換を廃止するためです。取引先から受け取った紙の手形を銀行へ預け、金融機関同士の交換で回収する仕組みが終わります。全銀協の案内

切替えの期限は、それより前に来ます。多くの金融機関は2026年9月30日を最終振出期限としており、その金融機関では、10月1日以後に振り出した手形は原則として当座預金から支払われません。未使用の手形帳が残っていても、そのまま使い続けることはできません。

地銀・信用金庫も同じ移行に取り組んでいますが、振出期限や取立受付の終了日は金融機関によって異なります。自社が支払う銀行と、受け取った手形の取立を依頼する銀行の両方で、期限を確認してください。

期限内に振り出した手形については、その後も満期の支払いが残ります。すでに保有する手形、特に2027年4月以後に満期が来るものは、早めに銀行と取引先へ回収方法を確認しておきます。

2.でんさいは継続。資金繰りへの影響は支払日で変わる

でんさいなどの電子記録債権は、今後も利用できます。銀行も紙の手形からの移行先として案内しています。終了する「電子交換所での紙手形の交換」と、でんさいは別の仕組みです。三井住友銀行の案内

法令に適合する同じ支払期日で、紙からでんさいへ切り替えるだけなら、支払いの前倒しによる資金負担は生じません。

資金繰りの見直しが必要になるのは、切替えと同時に、仕入れや外注費を支払うまでの期間も短くなる場合です。これまで取引先に待ってもらっていた支払いが早まるため、その間のお金を自社で用意する必要が出てきます。販売先からの入金も早まるなら、負担の一部を吸収できる場合があります。

なお、取適法の対象となる2026年1月1日以後の発注では、すでに手形払いが禁止されています。でんさい等でも、物品等の受領から60日以内に定めた支払期日までに、相手が代金の満額を現金で受け取れる条件が必要です。支払方法と支払期日の両方を、適用される法令に合わせます。経済産業省の説明公正取引委員会の要請

3.支払いが30日早まる場合の必要資金を見積もる

追加で必要になる運転資金は、まず「対象となる1日当たりの仕入額×支払いが早まる日数」で概算できます。

例えば、対象仕入れが税抜月600万円で一定、1か月を30日とし、仕入れが毎日均等に発生する場合を考えます。回収条件と在庫は変わらず、仕入れてから支払うまでの平均日数が60日から30日になる想定です。消費税、金利、季節変動は除いた計算例で、特定企業の実績ではありません。

計算すること 金額・日数
1日当たりの対象仕入額 600万円÷30日=20万円
支払いが早まる日数 60日−30日=30日
追加で必要になる運転資金の目安 20万円×30日=600万円

これは、毎月600万円の費用が増えるという意味ではありません。支払いを待ってもらえる金額が600万円減るため、同じ事業規模を維持するのに必要な資金が、その分増えるという関係です。

同じ取引規模と条件が続けば、移行後もその資金が必要です。利益の予算に加えて、預金残高と資金調達の計画に反映する必要があります。

4.旧手形と新しい支払いを、一つの資金繰り表に載せる

概算で金額をつかんだら、実際の入出金日で確認します。移行中は、以前に振り出した手形の満期と、新しい条件で早く払う仕入代金の支払日が重なることがあります。

資金繰り表には、次の三つを一緒に載せます。

  • すでに振り出した手形の満期と金額。
  • 新しい条件で支払う仕入代金・外注費の日付と金額。
  • 販売先からの入金と、給与・税金・借入返済などの予定。

月末だけでなく、支払いが集中する日の残高まで確認します。旧手形がすべて決済された後も資金需要が残るかを見ると、一時的に必要な資金と、継続して必要な資金を区別できます。

前の節で求めた概算額は、この資金繰り表で確かめるための目安です。新旧の支払いを反映して求めた不足額へ、さらに概算額を上乗せすると二重計算になります。

不足が見込まれる場合は、早めに金融機関へ相談します。あわせて、請求の遅れをなくす、販売先と回収条件を見直す、長い案件で着手金や工程ごとの入金を相談するなど、自社の入金を早められる余地も確認してください。

回収・支払条件は、創業時に価格と一緒に考えておくことにも、事業が動き始めてから見直すことにも意味があります。今回の移行を機に、お金が入る日と出る日を並べ直してみてください。

弊所では、月次の会計データを確認し、経営判断に必要な数字と論点を整理しています。支払条件を変えた後の資金繰りが気になる場合は、公認会計士・税理士へのご相談から始めていただけます。

参考資料