スマートレジ事前着手制度|補助金を活用するための準備と業者選び

法人の税務・会計実務公開 2026年9月21日7分で読めます

適用時点: 2026年9月21日時点(事前着手制度の詳細は今後公表予定。飲食料品の消費税率引下げは法案成立を前提とした改正案です)

執筆者: 檜垣秀治(公認会計士・税理士) 代表紹介を見る

レジを更新するなら、使える補助金はきちんと活用したいところです。ただ、制度の詳細が決まっていないうちに契約を急ぎ、不要な機器や高額なサービスを抱えてしまうことは避けたいものです。

2026年9月16日、デジタル化・AI導入補助金の事務局から、スマートレジ導入などの「事前着手制度」が公表されました。導入時期を早められる可能性がある一方で、どのような契約でも補助対象になるわけではありません。

今の段階で進めておきたいのは、必要な機能と費用を整理し、条件をしっかり確認できる業者を選び、後から申請内容を説明できる資料をそろえておくことです。この記事では、発注を判断する前に押さえておきたいポイントを解説します。

事前着手制度で公表されたこと

事務局の9月16日付のお知らせでは、2026年9月15日以降に補助対象となるスマートレジの導入やPOSレジの改修などを行い、後から補助金を申請できる制度が案内されています。申請受付は2027年1月頃の予定で、公募要領は後日公表されます。

現時点では、このお知らせから補助対象者の詳しい要件、補助率や上限額、対象経費、必要書類までは確認できません。現在のインボイス枠で示されている補助率や上限額が、今回の事前着手制度にもそのまま当てはまると考えるのは早計です。

「9月15日以降なら、どのレジをいつ契約しても大丈夫」と捉えないようご注意ください。契約・発注・納品・支払のどの日付が要件に関わるかも含めて、公募要領での確認が必要です。

以前の記事では、デジタル化・AI導入補助金の交付決定後の発注と資金繰りについて解説しました。今回はその後に公表された事前着手の制度を扱っています。なお、他の申請枠や設備投資にも、同じように事前発注が認められたわけではありません。

食料品の消費税1%は、現時点では改正案

背景にあるのは、飲食料品の消費税率を引き下げる方針です。国税庁・財務省のリーフレットでは、現在の軽減税率の対象である飲食料品について、2027年4月1日から2029年3月31日までの2年間、国と地方を合わせた税率を1%にする案が示されています。

ただし、国税庁の特設サイトにも書かれているとおり、これは法案が国会で可決・成立した場合の内容です。2026年9月21日時点で、成立済みの制度として扱うことはできません。

レジの準備では、税率を変更できるかに加えて、商品ごとの税区分、レシートの表示、返品時の処理、会計ソフトへの連携を確認します。期間限定の案であるため、引下げ時と期間終了時の両方について、誰が設定を変更し、追加費用がいくらかかるかを聞いておくと、更新後の負担を把握しやすくなります。

まず、買い替えが必要かを確かめる

最初に相談する相手は、現在お使いのレジの保守会社やメーカーです。既存の機器の設定変更やソフトの更新で対応できるのか、改修が必要なのか、それとも買い替えになるのかを確認します。補助金の話を聞く前に、まずはこの選択肢を整理しておきましょう。

買い替えを検討する場合は、税率対応とあわせて、日々の困りごとも洗い出してみます。閉店後の売上集計、現金とキャッシュレス決済の照合、在庫管理、会計ソフトへの転記など、自店で減らしたい手間を具体的に挙げてみましょう。

そのうえで、同じ機能・同じ利用期間を前提に複数社へ見積もりを依頼します。本体価格だけでは比較できません。初期設定、データ移行、操作説明、月額利用料、保守、税率変更作業、解約時の費用まで含めて比べることが大切です。

なお、ここでの相見積もりは、購入判断のための実務上の提案です。今回の制度で何社分が必須になるかを示すものではありません。正式な補助金の申請要件とは分けて考えてください。

営業説明は、書面と公式情報で確かめる

信頼できる業者かを判断するポイントは、補助金に詳しそうな説明だけではありません。未確定の条件を「まだ決まっていない」と説明し、見積もりや契約書に確認事項を残してくれるかが大切です。

商談では、次の点を確かめておくと比較しやすくなります。

確認すること 書面で残したい内容
補助対象になるという説明の根拠 参照した公式資料、掲載日、対象製品・サービス。詳細未公表なら、その旨
見積もりの内訳 機器、ソフト、設定、研修、保守等の内容と金額。使わない機能を外せるか
税率変更への対応 対応範囲、作業時期、テスト方法、追加料金、問い合わせ先
補助されなかった場合 購入代金・申請支援料の負担、解約や仕様変更の条件
申請と導入後の役割 自社が行う操作、業者の支援範囲、納品・研修・保守の担当

「登録事業者である」という説明を受けたら、公式サイトで登録状況を確認します。ただし、登録の有無だけで今回の契約全体が補助対象になることや、補助金の交付が約束されるわけではありません。

特に注意したいのは、自己負担分が後から戻るという勧誘です。事務局の不正防止の案内では、補助事業の自己負担を実質的になくすような返金や、紹介料などの名目による還元について注意を促しています。単なる値引きと一括りにせず、請求書などに記載された購入額と、還元を受けた後の実際の支払額が食い違わないかを確認してください。

また同じ案内では、GビズIDなどを他者に共有し、申請者が行うべき手続きを代行させることについても注意を促しています。申請支援を依頼する場合も、IDやパスワードを渡して丸投げせず、自社で行う手続きを確認しましょう。

説明に納得できなければ、その場で契約する必要はありません。提案書やメールなどのやり取りを保存し、事務局の相談窓口で確認してから判断できます。

発注するなら、資料と資金の両方を用意する

公募要領が出る前に導入を進めるかどうかは、「補助金を受け取れなかった場合でも、その投資を実行する必要があるか」で考えます。更新を待てる店舗であれば、見積もりと仕様の確認まで進め、契約は詳細が公表されてから判断する方法もあります。

故障や保守終了などで待てない場合は、先に進める理由と負担できる金額の目安を社内で共有しておきます。代金の支払時期に補助金が間に合う前提で考えず、補助金の入金を見込まずに資金繰りを確認しておきましょう。申請受付の予定月と入金時期は、別に確認する必要があります。

導入を進める際は、次の資料を一つの案件フォルダにまとめておくと、取引の経緯を追いやすくなります。なお、これは現時点での準備の目安であり、正式な提出書類の一覧ではありません。

  • 見積書、仕様書、比較資料、営業説明のメール
  • 契約書、注文書、発注日が分かる記録、社内の承認記録
  • 納品書、検収記録、導入機器の型番・製造番号、稼働を確認した資料
  • 請求書、振込明細などの支払記録、設定や研修の実施記録

すでに発注したものがある場合も、日付や金額を後から合わせることはせず、実際の記録をそのまま保存してください。制度に当てはまるかどうかは、取引の事実と公表される条件を照らし合わせて判断します。

詳細が出たときに動ける状態にしておく

今進めておきたいのは、現行レジの対応可否を確認し、見積もりを取り、必要な機能と負担できる金額を決めておくことです。公募要領が出たら、自社や導入製品、対象経費、取引日、申請手続きの条件を確認できるよう、社内の担当者も決めておきましょう。

補助金を活用するために準備を早めることと、契約を急ぐことは別です。必要な投資を見極め、十分な説明と資料がそろった段階で判断すれば、補助金を使う機会を探りながら、不要な支出も抑えやすくなります。

Evolica Tax & Accountingでは、クラウド会計の月次レビューや税務・会計のご相談に対応しています。レジ更新にかかる費用の会計処理や、税率変更に向けた経理の準備に迷ったら、まずは税理士へご相談ください。

参考資料