2026年10月施行 パート・有期雇用の待遇差説明と給与資料の見直し

法人の税務・会計実務公開 2026年10月5日4分で読めます

適用時点: 2026-10-05

執筆者: 檜垣秀治(公認会計士・税理士) 代表紹介を見る

2026年10月1日、パートタイム・有期雇用労働者の待遇改善に関する施行規則と告示が施行・適用されました。雇い入れ時の労働条件明示事項が追加され、待遇差の説明方法なども見直されています。改正内容は、厚生労働省の特集ページで確認できます。

会社がまず点検したいのは、労働条件通知書の様式と、待遇差の説明に使う資料です。給与計算を正確に行っていても、どのような基準で待遇を決めたかを説明できるとは限りません。本記事では、2026年10月5日時点の公表資料をもとに、経理と人事が連携して整理したい点を解説します。

雇い入れ時の通知書に、説明を求められる旨を加える

施行日以降、新たにパート・有期雇用労働者を雇い入れる際には、通常の労働者との待遇差の内容や理由等について説明を求められる旨を、書面の交付等で明示することが義務付けられています。厚労省の周知Q&Aでも、この対応が示されています。

昇給、退職手当、賞与の有無、相談窓口といった従来の明示事項に、説明を求められる旨が加わります。改正リーフレットと自社の通知書の項目を照合してみてください。厚労省のモデル労働条件通知書には、待遇差について説明を求める窓口の記載欄があります。

書式を変更した後は、新しい様式を使う担当者と使用開始日を決めておくと、旧様式を使い続けるミスを防ぎやすくなります。これは社内運用を整えるための提案です。給与計算の委託先にも、支給条件や適用開始時期を正確に伝えることが大切です。

説明義務の新設と取り違えない

待遇差の説明義務自体が、今回の改正で初めて設けられたわけではありません。パート・有期雇用労働法では、労働者から求めがあった場合、待遇差の内容や理由、法に定める措置で考慮した事項を説明することが既に求められています。改正リーフレットでも、この義務と説明方法を整理しています。

改正雇用管理指針は、資料を使って口頭で説明する方法か、説明すべき事項を全て記載した理解しやすい資料を交付する等の方法によるものとしています。一方、口頭説明に使った資料の交付は、望ましい対応です。個人情報等の事情で交付が難しい場合には、求めに応じて閲覧させる等の工夫に努めることも示されています。詳しくは改正事項の概要をご確認ください。

待遇差は項目ごとに検討します。基本給、手当、賞与、退職手当、休暇などをまとめて「正社員とは雇用区分が違う」と説明するだけでは、各待遇の目的や違いが十分に伝わらないおそれがあります。

金額と、金額を決めた根拠をつなぐ

給与明細や賃金台帳は、実際に支給した金額を確認する資料です。それに加え、賃金規程、支給要件、職務の内容、責任の範囲、職務の内容や配置の変更の範囲など、待遇を決めた根拠を整理すると、説明の準備がしやすくなります。

手当であれば、名称だけでなく、何のために支払うのか、どの条件を満たすと支給されるのかを確認します。同じ仕事という理由だけで全ての待遇を同額にする判断も、短時間勤務という理由だけで一律に減らす判断も避け、各待遇の性質と目的に照らして検討します。この考え方は、厚労省の令和8年改正Q&Aにも示されています。

根拠資料の一覧化は、説明を支える実務上の提案です。今回の改正で、新しい給与台帳の作成義務が一律に設けられたという意味ではありません。表を作ること自体を目的にせず、規程と実際の支給が一致しているかを確認するために使います。

見直しの結果を、人件費の予算にも反映する

支給条件の見直しが必要になった場合は、労務上の検討と並行して、人件費予算への影響も整理します。対象人数、適用する月、毎月の手当、賞与等の支給時期を分けると、年間の費用と実際の資金支出を確認しやすくなります。

制度変更の内容が決まったら、給与計算の設定、労働条件通知書や規程、社内の承認記録を同じ内容にそろえます。外部へ給与計算を委託している場合は、変更を伝えた日と、委託先が反映を確認した日も残すと、適用月の取り違えを見つけやすくなります。

不合理な待遇差を解消するために、通常の労働者の待遇を引き下げればよいとは考えません。待遇の見直しには、労働条件の変更に関する個別の検討が必要です。

更新時の対応と、資料の扱いを決めておく

説明の求めがない場合でも、契約更新時等に待遇差の説明資料を交付したり、説明を求められる旨を周知したりする対応は、改正雇用管理指針で望ましいとされています。既存の全従業員に10月1日付で通知書を再発行する義務が生じた、という説明とは分けて考えます。

比較資料には、他の従業員の個人情報が含まれる場合があります。説明に必要な内容と閲覧できる担当者を決め、給与データを広く共有する運用は避けてください。

支払関連の変更を確認・承認する考え方は、支払統制を整理した記事も参考になります。人件費の増加を資金繰りへ反映する際は、回収・支払条件を見直す記事とあわせて、入金日と給与等の支払日を確認してみてください。

本記事は一般的な整理であり、個々の待遇差が不合理かどうかは、職務や制度の実態によって判断が異なります。就業規則や労働条件の変更、待遇差の法的な判断は、社会保険労務士や弁護士等にご相談ください。人件費の予算管理や税務・会計上の取扱いについては、税理士にご相談ください。